アニメ批評「私に天使が舞い降りた!」(2019年冬)

2019年の冬・第1クールは、「バーチャルさんはみている」や「けものフレンズ2」といった資源の無駄使いともいえる糞アニメから、「かぐや様は告らせたい」や「ケムリクサ」のような神アニメまで様々な作品が出揃った激動の1クールであった。ここでは「わたてん」の略称で親しまれた平成最後の神ロリアニメ「私に天使が舞い降りた!」を批評していく。ただ本作品は非常に出来がよく、今までの評価法では○や◎だらけになってしまい問題点が分かりにくいため、以下の3つの記号および評価点に絞ることにする。

×=良くない点・改善すべき点
△=あまり良くないと思った点
□=普通に視聴していると気づきにくいポイント・およびただの独り言


1話『もにょっとした気持ち』
□花との出会いのときに、ドアの取っ手や花の髪飾りの左右が逆転しているのは、みやこの瞳の中の映像という演出である。
□壁にあるカレンダーを見るに、この世界は令和元年の5月であると考えられる。
×謎な塗りわけをされた世界地図。以降もたびたび登場するが、領土問題・国際問題を想起させるため余計なことはしないでほしい。国ごとや大陸ごとの大まかな色分けではダメだったのだろうか?
男児2名確認

2話『サイキョーにカワイイ』
□大学生のみやこが着れるホワイトリリィのコスプレ服を、小5の乃愛が普通に着れるのか?
×みやこのスマホがめったに鳴らないためどこにあるか分からないというネタは、花をスマホのカメラで撮りまくっていたため、少し矛盾を感じる。撮影シーンは後々の話に出てくるデジカメ(および一眼レフ)で統一した方がよかったかもしれない。(10話でのスマホを忘れるくだりともマッチする)
□サイキョーにカワイイアタシを撮ろう!大会で、ひなたと花も自分のスマホを持っていることが確認できる。(みやこと乃愛のスマホとは色が異なるため)
男児2名確認

3話『刷り込み』
△ひなたに夏音が「すごろくできたら見せてね」と言っていたが、完成した「みゃー姉更生すごろく」を見せたのか?見せたなら夏音は疑問に思わなかったのか?
×みやこの小学生のときの通知表の所見欄の「成績」の績(糸へん)が積(のぎへん)になっている。
△ひなたが追いかけているトラックの陰がおかしい。(トラックの右側に影がない)
△みやこのスマホのカメラのレンズの位置が、1話・2話のときと逆になっている。
×刷り込みというタイトルであるが、ひなたがなぜ母ではなくみやこに懐いたのかの理由が明かされず、刷り込みというよりかは単なる好みの問題になってしまっている。

4話『ちょっとお話よろしいですか?』
□花が水浸しになったアイスを庭に捨てているが、かき氷の氷の部分だけを捨てているのか?
×みやこがスク水が苦手な理由が謎。スク水は視聴者にとって一番人気の水着であり、反感を買うためきちんと理由を言ってほしい。
□乃愛が「ひなたちゃーんあそぼー!」と言っているシーンで、みやこの服が黒から白になっている。
□この話から、スマホではなくデジカメで撮影をしているみやこ。
△浴衣が3人とも同じような形であり、いまひとつ。また、小学生なのだから股下の短いミニの浴衣(浴衣ドレス)の需要にも応えて欲しかった。(特にひなた)
△小依の輪投げ30本は流石にやりすぎ。(1回3本300円or6本500円であるため2500~3000円)
□次回予告で花が持っている水着ひげろーの水着がかなりきわどい。

5話『いいから私にまかせなさい!』
□調理実習や下校のシーンでかなりの生徒が画面に映ったが、男児は一人も確認できず。
△こげたクッキーの行方が気になる。(おそらくみやこに渡したであろうが、そのときの反応も含めて)
夏音のコスプレも一回くらいは見たかった。(文化祭での天使やOVAでは見れるが)
□給食のシーンで男児4名確認。
□先生「…流行ってるの?」のシーンで男児2名確認。これを最後に男児は登場しない。

6話『みゃー姉に友だちはいないぞ』
△ひなたが武装メイドの衣装を脱ぐ姿を少しくらい見たかった。
△いつの間にかみやこが一人で着てるのを知っているひなた。2話では知らなかった描写があるが、いつ知ったのか?
□松本がみやこに名前で香子と呼ぶことを頼み、実際に香子ちゃんと呼んだが、それ以降一度も名前で呼ぶことはなく、ずっと「松本さん」である。
□高2時の松本も、みやこに倣ってか黄色いカラコンをしている。
□この話のEDから、ラストに松本が覗いている。

7話『みゃー姉が何いってるかわかんない』
□この話のOPから、松本がこっちを見る。
□OP明けのひなたの制服の首もとが、体温を測った後のためめくれている細かい演出。
×ひなたが一瞬で寝たと思いきや、みやこの「やっと寝た」のセリフで台無し。
△小依のセリフ中の「コンビニに売ってなかったから」は不要か。帰り道にスーパーもあるであろうし、ネギを買ってきたところでどう食べさせるのか。
□乃愛が、花は料理苦手と言ったのは、小依のミスによる黒こげクッキーのせいか?
△余ったクリームが欲しいと言った花に対してみやこが、それは越えちゃいけない一線と言うが、そこまでのことではないと思う。
□乃愛のデートの誘いを、結構ですと影つきの顔で断るのは少し可哀想。
△どうして好きなら離れて欲しいかの理由を言わないと、理屈が通じないということにはならない。(理屈が通じないのではなく、主張を呑んでもらえていないだけ)
□演出として、みやこと距離を置くように言われたひなたの2日目と3日目の反応を逆にしたほうが良かったように思える。

8話『知らないほうが幸せなことってあるよ』
△乃愛の服がとび職のようなクソみたいな服を着ているが、普通にロングスカートにしたほうがよかったと思う。
□チョコアイスを食べるひなたの頭のあたりに映っている人(頭)は、実は松本である。(9話Cパートの写真で確認できる)
□卒アルの写真ではカラコンをしていない当時の松本。
□友奈(松本の妹)の見たみやこがホワイトリリィになっている写真は、1話で姫坂家の引越しのバイトをしていた松本が撮った写真であろう。(9話Cパートの写真で確認できる)
□みやこが乃愛のお手とおかわりの真似をするひなた。最初にみやこと逆の手を出してしまい少し動揺するところまで細かく描かれている。

9話『私が寝るまでいてくださいね』
□この話では、みやこのカメラがデジカメから一眼レフになっている。
△6時に起き、13時から映画開演であるが、早起きしたわりにサンドイッチ作りに時間がかかりすぎでは?
□乃愛がサンドイッチのバスケットの蓋を閉めようとするとき、一度引っかかって閉じ直している。
△天使だった頃のみやこの写真が映っているシーンで、左上のピンクの服を着ている可愛い写真が見切れている。
△アルバムを持ってきたときはWinRARのアイコンのように分厚かったが、いつの間にか薄くなっている。
□めがほむ化した花の妄想から抜け出したときのひなたが、いきなり眼帯をつけている。
△ひなたが、みやこの作った料理の話をした後によだれをぬぐうという演出が分かりにくい。
□8話のリンゴはアップルパイとなり、花の口に入ったことがうかがえる。
□乃愛が左手でスプーンを使っている。
□SIRENTの文字のあとに4人の座り位置が反転しているのは、テレビ画面に反射している4人の姿であるため逆になっている。(が、分かりにくい演出である)

10話『また余計なこと言っちゃった』
□若干の作画の崩れが見られる回
△なぜか乃愛が固まっているシーンが多く見られた。
△乃愛がジャンケンに参加している理由がナゾ。
□シュークリームを買った帰り道で、花が縁石で背伸びをしてみやこと同じ背の高さになっているというシーンで、縁石が高すぎるのではないかという指摘を散見した。みやこと花の身長の差は、公式サイトから20.4cmであることが分かり、花が背伸びをしていることから縁石が高さは約15cmであることから、これは標準的な縁石の高さであるといえる。

11話『つまりお姉さんのせいです』
△所々に顔や輪郭の乱れが見られる回
□花が劇の主役を務めることを知りビデオを買わなきゃと言っていたり、中盤で「早くビデオ買わなきゃな~」と言っていたみやこだが、結局12話での上演中では撮影していなかった。
×3話では「5年3組」と書かれていた教室の表札が「5-3」になっている。(終盤で映る別の教室の表札も同様に「3-3」「3-4」「5-2」「6-1」「5-4」「1-2」となっている。)
□松本のスマホの背面が、みやこのスマホと同じ。おそらく同じ機種を買ったのであろう。(正面は確認できず)
△乃愛が縫っているシーンで右手で針を持っている。9話でカレーを食べるときにスプーンを持つ手は左であった。
□天使のまなざしは、「先生が用意してくれたオリジナルの話」と夏音が言っていたことから、あの壮大は劇のストーリーは先生が作ったと考えるのが自然であろう。
×天使が弓矢で人間を撃ち殺すという、ひなたが台本の内容を忘れる(間違える)というギャグは無理がありすぎて違和感がある。
×小依と夏音の風呂シーンカット
△教室で女子生徒たちがまるでEDの「ハッピーハッピーフレンズ」のような振り付けを練習していたが、劇中にそのようなポーズは登場せず。
△花がみやこのパーカーを引っ張るシーンで、もう少し脱げてる感が欲しかった。

12話『天使のまなざし』
□演劇の途中で一気に場が開けて壮大になるのは、そのときみやこの瞳がアップになることから、みやこの脳内補正がかかっているということであろう。そのため、あたかもワイヤーアクションをしているかのように自然に飛んだり、天使の輪をつなぐ針金が消えていたり、乃愛の演じるマリーの眉毛の色がちぐはぐになっていなくなっていたりしている。
×劇中の後半に松本姉妹が登場するしているが、意味がよく分からない。先述の通り、みやこの脳内補正がかかっている最中であるから、実際に松本姉妹が劇に出ているかどうかは微妙である。仮に松本姉妹が出演しているとすると、そのすぐ後に松本姉妹が観客に戻っていたり、演劇後の教室での担任の先生との会話との整合性が取れない。また、実際には出演していないとした場合は、他の生徒が演じている様子をなぜか松本姉妹に変換したことになり、これも意味不明である。このような安直な笑いに走らないで欲しい。
□10話Cパートにて黒板に脇役の配役として「その他 天使2人・人間5人」と書いてあったが、実際にはその他の天使は4人以上確認できる。
×11話でみやこが先生に不審な人物として捕まえられたことに対することが一切なかったかのようになっていて、まるで初対面のようになっている。ひなたの姉=みゃー姉さんということは既に知っていたはずである。
□教室での乃愛と小依の黄緑色の首輪(チョーカー)が消えているシーンがある。
×11話で「5-3」と書かれていた教室の表札が3話での表記の「5年3組」(隣や他の教室では5年2組・1年2組・1年3組)に戻っている。さらに、終盤のみやこがくしゃみをするシーンでは「5-3」になっており、一貫性がない。
△みやこの走馬灯が流れるシーンは、みやこのモノローグからも花が映っているシーンのみにしたほうが自然か。
□花の最後のセリフ「おじゃまします」が、1話での花の最初のセリフと一致している。

OVA EP01『期待を裏切らないね』
OVAということもあり、作画が大幅に崩れている箇所が随所に見られる。
□本編では見えていなかった、乃愛と花のなんでもやる券。手作りなだけあり、互いに個性が出ている。
×ひなた・乃愛・花の3人が湖に入って遊ぶシーンにおいて、みやこも含め水着の上にライフジャケット的なものを着ている。せっかくの水着シーンが台無し。サブタイをもじって言えば『期待を裏切られたね』
□テントを張ったり、着火剤の使い方やスモアの登場といった一連の流れが、ゆるキャン△を彷彿させる。

OVA EP02『常に寄り添い』
×この話のほとんど全てが本編の映像の使いまわしである。

OVA EP03『これに着替えましょう!』
□この回は作画は安定しており、各キャラのコスプレ姿もかわいく描けている。
□友奈(松本の妹)のコスプレが、ゆるゆりの京子のトメイトゥに似ている。

OVA EP04『私がお姉ちゃんだよ』
□みやこが着ている服が上下とも、1話や6話でひなたが着ていた服と同じであり、お下がりであったことが分かる。

総評
冒頭にも述べたが、本作品は非常に出来がよいため、今回は×・△・□の3つの記号および評価点に絞っている。そのため私がこの作品に対して文句ばかりを言っているように見えるかもしれないが、そうではない。スマホの画面内の描写やキャラクターひとりひとりの所作など、かなり細かい演出が施されている。それに対して一つひとつ◎や○で書いているとかなりの文量になってしまうため今回は割愛した。
総評としてのマイナス点を挙げるとすれば、前半は少なからず男児および男性のキャラクターが描かれていたが、後半になると全く描かれていなくなっていて不自然である。ひなた達の通う小学校はあらかじめ女子小の設定にすべきだったと思う。前半5話までに登場していたクラスの男子たちが演劇の出演者や舞台裏にひとりも登場していないのは、やはり違和感を覚える。
また本作品の作画のレベルは非常に高かったが、ラスト3話で少々崩れてしまい、それ以前とのギャップにより目立ってしまう事態となった。特にOVAでは酷く、とても見れたものではない。また、OVAの内容もイマイチであり、OVA目当てで3巻を買った層をがっかりさせることになってしまった。売り上げ枚数が落ちがちな最終3巻目の売り上げを伸ばせればそれでよかったのかもしれないが、2期やそれ以降に繋げることを考えるとかなりマイナスだと思う。
批判だけに終始するだけでは現在の野党と変わらないためOVAの内容の代替案を私なりに挙げる。まずEP01の内容をひなた・花・乃愛・小依・夏音の5人で夏休みに学校のプールに行くというストーリーが良かったと思う。4話で見られなかった、ひなたと乃愛のスク水姿や、相対的に出番の少なかった夏音と小依も登場させることができる。さらにその中で、みやこがなぜスク水が苦手なのかをひなたに説明させたりと、視聴者の需要に十分応えられる内容になったのではないか。また、ほぼ使い回しの内容であったEP02を削除し、他の回の作画の向上に力を回すべきであったと思う。
そして全体的に笑いの部分を松本に頼りすぎた感が否めない。何とか松本を全話登場させることに成功したようだが、視聴者が望んでいるのはひなた達5人とみやこであり、11話の小依と夏音の風呂シーンカットや、12話の劇中乱入をしてまで松本を望んでいたわけではないことを分かって欲しい。
最後に、12話において演劇を15分半にわたり全編ノーカットで放送したのは英断であったといえる。普通の作品ならダレてしまい失敗に終わることが多いが、なぜここまで成功したのかというと音楽・演出・シナリオ・歌唱の全ての完成度が高かったからである。特に本作品の音楽を担当した伊賀拓郎の功績は大きい。本作品のCD「サウンドコレクション」には、BGMから劇中の曲(歌入りのみ)が全て入っているためオススメである。
円盤の売り上げは4000枚ほどであり2期の可能性は正直微妙であるが、またこのクオリティで天使たちと再会できることを心待ちにしている。